醤油の老舗蔵元、職人の九谷焼、地元の発酵食、そして革新的なネオトラディショナルスイーツを発見できる、金沢2日間のモデルコースを紹介します。
金沢の発酵文化を探る

伝統工芸と熟練した職人で知られる金沢は、世界レベルの美食の地でもあります。この地域の豊かで複雑な味わいの秘密は、地元産の発酵食品にあることが多いです。麹や醤油で引き立てられた料理から、発酵あんこを使ったスイーツまで、発酵は金沢料理に欠かせない役割を果たしています。
日本海に面した主要な港町として、金沢は江戸時代から交易の拠点として栄えてきました。歴史的に、九谷焼から醤油に至るまで、地元の産品や工芸品は北海道まで運ばれ、高品質な物産の産地としての金沢の名声を確かなものにしました。
本記事では、金沢のあまり知られていない一面を体験できる2日間のモデルコースをご紹介します。兼六園や近江町市場といった定番スポットも訪れながら、伝統的な発酵食品から生まれる地元の絶品料理やスイーツに焦点を当てた旅です。
ヤマト・糀パーク:発酵をテーマにしたツアー・体験・グルメを楽しむ

金沢の発酵文化を知るための最良の出発点が、歴史ある大野港地区に位置するヤマト・糀パークです。1911年にこの地で創業した地元メーカー、ヤマト醤油味噌が運営する施設です。
パークでは、味噌・醤油・日本酒などの日本の定番食品に欠かせない麹についての知識を深めることができます。麹の種類によって生まれる風味は異なり、一般的に米麹は味噌の醸造に、麦麹は醤油の製造に使われます。

こうした知識は、施設の無料ガイドツアー(所要約30分)で学ぶことができます。ツアーは平日11時・14時、週末は11時・13時・14時に開催しています(水曜定休)。わかりやすいイラストを用いて、スタッフが麹の重要な働きを説明してくれたのち、かつて北前船が地元産品を積み出した歴史ある船着き場を含む施設内を案内してくれます。
館内で製造された美味しい玄米甘酒の試飲に加え、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月熟成させた味噌の食べ比べも体験できます。日本の奥深い発酵文化について、楽しく学べる見学ツアーです。

年齢を問わず楽しめる体験として、みそぼーる作り体験もあります。スタッフの指導のもと、地元の味噌を一人分のボール状に丸めて、好みのトッピングをのせながら、自分のオリジナルの味噌汁の作り方を学んでいきます。
名古屋・愛知で親しまれている濃厚な豆味噌とは異なり、金沢の人々は軽やかで甘みのある米味噌を好みます。こうした地域ごとの違いを知ることが、日本の発酵文化の奥深さへの絶好の入口となるでしょう。
麹パークツアーとみそぼーる作り体験についての詳細はこちら(日本語サイト)

糀パーク内のレストラン「発酵美人食堂」でのランチは、訪問のハイライトとも言える体験です。おすすめのランチセットは、麹・塩麹・その他の伝統的な発酵食品を用いた料理が彩り豊かに並ぶ、目にも楽しいご馳走です。なかでも「塩麹を使ったチキングリル」は驚くほど柔らかく、味噌ソースとの相性が抜群。また「醤油麹を使ったサワラのグリル」は芳醇な香りとほのかな甘みが印象的です。
その他、「寝かせ玄米®」も楽しめます。通常の玄米よりも柔らかく消化しやすく、その深い香りと豊かな風味はクセになること間違いなし。メニューは旬の魚や野菜を取り入れて毎月変わりますが、すべての料理にヤマト醤油味噌の製品が使われています。

ランチの後は、施設内のショップ「ひしほ蔵」に立ち寄り、お気に入りの味をおみやげに持ち帰ってみてはいかがでしょう。ヤマト醤油味噌は、看板商品の醤油と「かなえ味噌」、そして脂の乗ったグリル料理の後味をすっきりさせる「柚子ポン酢」も有名です。このポン酢は日本で初めて玄米甘酒を使用することで独特なまろやかな口当たりが特徴です。
ノンアルコールで栄養豊富、自然で上品な甘さが特徴の玄米甘酒もお見逃しなく。また最近では、食前酒やデザートドリンクとしてもぴったりな3種類のどぶろくも販売が新たに始まりました。
金沢のウォーターフロントを散策する

金沢といえば、市街地の歴史的な町並みが注目を集めていて、海辺のイメージはあまりないかもしれません。しかし、北部の港町・大野地区は、金沢の経済史において重要な役割を果たしてきました。実際、ヤマト醤油味噌はここに蔵を構えた多くのメーカーのひとつでありますが、沿岸を行き交う交易船への直接のアクセスを求めて、数多くの醸造元がこの地に集まりました。
訪れた際はぜひ、潮風を感じながらひと息ついてみてください。晴れた日には、遠くに白山の峰々を望むことができます。この眺めは地元の人々にとって縁起の良いものとされており、白山は日本三霊山のひとつであるだけでなく、その清らかな雪解け水は高品質な醤油の醸造にも欠かせない存在なのです。このエリアの醸造所を訪れると、必ずといっていいほどこの話を耳にすることでしょう。
直源醤油で醸造所見学とデザートを楽しむ

大野醤油ならではの風味をさらに深く知るなら、直源醤油を訪ねてみてください。この歴史ある醸造所では、見学ツアーに加え、醤油風味のスイーツが楽しめる居心地の良いカフェも営んでいます。
直源の起源は17世紀初頭にさかのぼります。加賀藩主・前田利常が地元の住民、直江屋伊兵衛を紀州(現在の和歌山県)に派遣し、醸造の技を学ばせたことが始まりです。伊兵衛はその技術を大野に持ち帰り、1825年に直源醤油を商業的な事業として創業しました。
19世紀半ばには、大野には約60もの醸造所が立ち並んでいました。この地で醸造される「大野醤油」は、京都や江戸の醤油よりも甘く、九州の醤油ほど甘くない、独特の風味で知られていました。隆盛を極めたこの時代、直源は5隻の交易船を運航し、北海道や樺太にまで商路を広げました。

しかし、1868年以降の明治政府による急速な近代化は多くの小規模業者を廃業に追い込み、1877年には大野に残る醸造所はわずか10軒にまで減少しました。激しい競争にも耐えながら存続を続けた地元の醸造業は、1970年に組合を結成することで長期的な解決策を見出しました。現在は醸造の初期工程を組合の工場で一括して行い、発酵させた醪(もろみ)を各醸造所に届けた後、それぞれのブランドが独自の風味に仕上げていきます。
直源の見学では、英語案内付きの映像やイラストを通じてこの興味深い歴史を学べるほか、スタッフが作業する施設内を覗くこともできます。

ショップでは、購入前に試食することができ、多彩な醤油・調味料・ドレッシングなどが揃っています。

おすすめは、定番の「丸大豆醤油 もろみの雫」です。厳選した原料だけで作られた、素材本来の味わいを楽しめる醤油です。ユニークな一品を求めるなら、もろみの雫をパウダー状にした「パウダー醤油」をぜひ試してみてください。看板醤油をフリーズドライで粉末化したもので、塩と同じように使えながらナトリウム含有量は控えめ。粉末状なので保存や携帯にも大変便利です。
その他のスナック類も見逃せません。醤油味のおせんべいやキャンディなどのお菓子は、醤油の万能な使い方を示す良い例で、スイーツに深くおいしい香りをプラスしてくれます。

大野地区観光の締めくくりには、築100年の蔵を改装した趣のある「ギャラリー&茶論(サロン) もろみ蔵」へ。

こちらでは、コーヒーや紅茶との相性抜群な醤油風味のソフトクリームでひと息つけます。甘さと塩気の絶妙なバランスは、まさに感動の一言です!
充実した一日の終わりは、金沢市内の居心地の良いホテルでゆったりと。この街の豊かな歴史と職人たちの匠の技に思いを馳せながら、翌日の探訪に向けてエネルギーを充電しましょう。
近江町市場の活気を体感する

旅の2日目は、「金沢の台所」として親しまれる近江町市場からスタートしましょう。約170店舗が軒を連ねるこのにぎやかなアーケードでは、新鮮な海の幸から地元の果物・野菜・漬物まで、金沢料理に欠かせない食材が勢揃いしています。

テイクアウトにぴったりな出来立てのグルメを提供するお店も多く、目の前で焼き上げる串焼きや新鮮な刺身をイートインで楽しめるカウンター席を設けたお店もあります。食べ物だけでなく、市場の魅力は人々の観察にもあります。日々の買い物をする地元の方から、その日最高の食材を選ぶプロの料理人まで、さまざまな人々の姿が見られます。金沢の食文化を肌で感じるなら、ぜひ立ち寄っておきたいスポットです。
にし茶屋街を歩いて金沢の工芸を発見する

次は、市街地のすぐ西に位置するにし茶屋街を散策しましょう。伝統的な建築が並ぶ風情ある地区で、ひがし茶屋街・主計町(かずえまち)と並ぶ金沢三大茶屋街のひとつです。午前の時間帯はひがし茶屋街と比べてぐっと静かで、ゆったりと散策を楽しめます。
長年続く割烹料理店が、特徴的な木格子窓を持つ美しい二階建ての茶屋に入っていたり、洗練された雰囲気が漂うエリアです。ゆっくりと歩けば、カフェや土産物店、寺院、ギャラリーなどと出会うことができるでしょう。特におすすめのスポットが、金沢を代表する伝統工芸のひとつ、九谷焼の制作現場を見学できる「九谷光仙窯」です。
九谷光仙窯の工房見学:九谷焼を学ぶ

九谷光仙窯は、工房・ショップ・ギャラリーで構成されています。ショップに並ぶ作品の美しさだけでも圧倒されますが、プロが案内する約45分間の工房見学への参加も強くおすすめします。英語でご説明いただけるほか、窯の歴史や九谷焼の特徴を深く学べて、ろくろの実演や大型の焼成窯の見学も楽しめます。

九谷焼は、「陶石」が原料です。その石が最初に発見されたのが九谷村です。
九谷焼は磁器の原料となる陶石が九谷村で発見されたのを契機に金沢から南の地域で作られてきました。。繊細な形と鮮やかな色彩を実現するために、異なる窯で基本的には3回、デザインや絵の具の素材によって6回程焼成されることもあります。

江戸時代(1603〜1868年)以来、九谷焼は古くから赤・青・緑・黄・紫の五色が用いられてきました。この鮮やかな色彩は地域の気候から生まれたと言われています。金沢の冬は雪が多く、何ヶ月もの間、景色が白一色に覆われるため、地元の人々は日常生活の中で自然と鮮やかな色彩を求めるようになった——そんな文化的背景が、九谷焼を他の地域の焼き物と一線を画す個性として美しく表れています。

職人による、ろくろの実演は目が離せません。本来難しい作業であるにもかかわらず、長年経験を積んできた職人だからこそできる、いとも簡単に熟れた手つきで、生の粘土を自在に形作っていく様は圧巻です。ギャラリーでは、茶道で使われる優雅な茶碗から精緻な飾り皿まで、見応えある作品が展示されています。

九谷光仙窯の作品は、どれも素晴らしい記念品になります。なかでも徳利とお猪口のセットは海外からの旅行者に特に人気で、個性的なフォルムと鮮やかな色彩が旅の思い出の品としてぴったりです。
四十萬谷本舗でランチ:かぶら寿司と発酵を使った美味しい料理

ランチは、1875年創業の金沢の伝統的な漬物と発酵食の専門店、四十萬谷本舗(弥生本店)へ。看板商品の「金城かぶら寿し」は、シャキシャキのカブ・脂の乗ったブリ・麹を重ねて発酵させた、縁起の良い金沢の郷土寿しです。 冬の保存食として作られた発酵寿し「熟れずし」を起源に持つ金沢のかぶら寿しは、今や上質な逸品へと進化を遂げました。純粋な旨みを追求する中で生まれたこの特別な料理は、現在では贈り物や祝いの席に欠かせない存在となっています。

隣接するカフェでは、かぶら寿しと大根寿し(塩漬けした大根とニシンを麹で漬けこんだもの)を含む食べ比べメニューを楽しめます。これらの特産品はショップでも購入でき、日本酒との相性は抜群です。

四十萬谷本舗のランチメニューには、麹を使ったカレーからおにぎり、チャーハン(秘伝の味噌漬と卵の焼きめし)など、発酵によってうま味を引き立てた料理が揃っています。定食にはいろどり豊かな金沢の漬物が付き、その爽やかな味わいにきっと虜になるはずです。

デザートには、お店自慢のジェラートをぜひ。味噌・梅干し・香ばしい加賀棒茶など、その地域だからこそのユニークなフレーバーが揃い、地元の食文化を現代的に表現した楽しい一品です。

かぶら寿しのほかにも、おみやげにぴったりな多彩な金沢の漬物が店内に並んでいます。また、四十萬谷本舗では麹を日常に取り入れる方法を学べる人気のワークショップも開催しています。カットして刻んで麹漬け床に漬けこみ、麹のお漬物を自分の手で作る体験です。参加を希望する方は、四十萬谷本舗の公式サイトのお問い合わせフォーム(英語対応可)からご連絡ください。
金沢の名勝・兼六園を散策する

金沢に来たなら、日本三名園のひとつとして広く知られる静寂の名園、兼六園の散策は欠かせません。

兼六園の歴史は1676年にさかのぼります。加賀藩が金沢城に隣接するこの地に居を構え、庭園の整備を始めたのが起源です。数世紀にもわたって丹念に手が加えられてきた庭園には、池・伝統的な茶屋・石灯籠・橋が点在し、どの角度からもまるで絵葉書のような景色が広がります。
四季折々に異なる美しさを見せる兼六園ですが、冬に訪れると「雪づり」という珍しい光景に出会えます。重い雪から松の枝を守るために施された、傘のような縄の装飾は冬ならではの風物詩です。
甘味と発酵:Cafe Kan 本店でティータイム

夕方には、コーヒーや紅茶に合う甘いひとときを求めて甘Cafe Kanへ。このカフェは、1888年創業の老舗和菓子店 越山甘清堂が運営しています。発酵させた小豆と白いんげん豆を取り入れることで伝統的なお菓子に革新をもたらした、まさに業界の先駆者です。米麹の力で豆を発酵させることにより、風味を損なうことなく自然な甘みと低カロリーを両立したお菓子を作り上げています。

Cafe Kanでは、あんみつやぜんざいといった伝統的な和菓子から、和の伝統と現代的なセンスを融合させたパフェまで、幅広いデザートでこの革新的な食材を体験することができます。これらの特製発酵豆は、すぐ隣に設けられた同ブランドの専門研究所「AZUKI de HAKKO」で開発されています。
これらのデザートが特別な理由は、そのまろやかな甘さにあります。砂糖の使用を半分程度に抑え、発酵によるすっきりとした甘みと深い旨味が引き出す風味は、素材本来の味わいを感じられます。食べた後も爽やかで軽やかな気分が続きます。

カフェは美しく改装された町家(金沢の伝統的な町屋)の中に入っており、居心地の良い二階の畳の間が、ゆったりとくつろぐのにぴったりの雰囲気です。

越山甘清堂の本店のすぐ隣という立地も便利で、スイーツを楽しんだ後にそのままおみやげを購入することもできます。

お土産には、常温保存ができて、日持ちするお菓子がおすすめです。発酵小豆を使った看板商品の発酵ようかんは、金沢ならではの風味を家族や友人と分かち合うのにぴったりの一品です。
発酵を通じて金沢料理の奥深さを探る
この旅程を終える頃には、金沢の食の世界が一般的な旅行ガイドに書かれている以上に、はるかに奥深いものであることに気づくでしょう。歴史に根ざした醤油文化、麹の革新的な活用法、そして健康志向の発酵スイーツは、この街に眠る魅力のほんの一部に過ぎません。
おいしい思い出と新たな発見、そしてインスピレーションをたっぷりと抱えて、充実した旅をお楽しみください。